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私の注文を受けたオバアは去ってゆき、
厨房に居る女性に注文を伝えている。
この女性は毎回来るたびに見かける女性で、
十兵衛のオバアより若く、私のオカンぐらいの歳であるように見受けられるから、
おそらく娘さんか嫁さんか、どちらかなのではないだろうか。
基本的に「十兵衛」は、その女性とオバアの二人で切り盛りされているようだ。
うどんを待つあいだ、
私はとにかく窓の外に見える山と田園の風景を、ただただ見つめていた。
雨は一旦上がったようだが、相変わらずの灰色の空と、
伸び始めた草の淡い緑による色彩の対比は、
窓ガラスに付いた水滴の妙味からか、水彩画みたいな風情がある。
流れるテレビの音声。
テーブル席のおじさんたちの話し声。
ソロリソロリと歩み寄って来たオバアが私の前に置いたそれは、
田舎のうどん屋にまったりと漂う穏やかでのどかな時間を切り裂く、攻撃力。
『ジャンボ十兵衛(三玉)』
通常よくあるうどんのドンブリよりも
数段大きなドンブリに入れられた、大量のかけ出汁。
その上には、「揚げ」や「ワカメ」など、
うどんの具材の定番から、「コーン」や「ゆで卵」や「海苔」みたいな、
うどんよりもラーメンの上でよく見かける奴らも乗っている。

特筆すべきは、
「カニカマ」これがなんとも十兵衛らしくて素敵だ。
「全日本カニカマ評議会」の高知支部長を勤める私は、大変に感動した。

極端な攻め気は無いけれど、柔らかで優しい食感、
その芯部にたしかに籠められているように感じ、噛むたびに、
ビンッビン・・・!
伝わって来る・・・!オバア魂っ・・・!!<うあぁぁぁぁぁ・・・・・・!
アルデンテの変化を揺さぶりかけながら・・・!
胃袋の中っ・・・心の中っ・・・・・・!>跳ぉぉぉぉぉび込んできたぁっ・・・!!ジャンボ十兵衛の全速強襲っ・・・!!
『カツカレーうどん』
サクサクの「トンカツ」と、出汁が効いた「カレー」
それから我らが「うどん」のスリートップによる攻めは、
優しく包み込んでくれるような「ジャンボ十兵衛」とはまた違った軌道を描き、なかなかに力強い。
一応、これを数式に直してみると、
「(豊ノ島+琴欧州)×白鳳」である。
無論、「豊ノ島=トンカツ」「琴欧州=カレー」「白鳳=うどん」で、
欧州カレーに、白いうどん、しかも白いうどんは横綱で云わば"主役"であるという、
非常に無理がなく上手な設定になっている。
ちなみに豊ノ島は、
「"と"が付くから」という理由だけでの選出だ。

一方、
「食べても食べても減らない魔法のうどん」との闘いは、激しさを増していた。

大きな大きな重たいレンゲ、数十トン。
これは翌朝確実に筋肉痛になる重さだ。しかし私は日々の農作業で体を鍛えている「マッスル農民」で、
「筋肉のカタマリ」みたいな体をしているから、翌朝確実に筋肉痛になるようなことは無いだろうが、
筋肉痛になる可能性が絶対に無いとも言えない、心配である。
<うぉぉぉっ・・・染みてきた染みてきた・・・!!>優しく穏やかに流れ込むかけ出汁が、
ジワリジワリと染みてくる・・・・・・!
身体の隅から隅・・・!
五臓六腑・・・・・・!心にっ・・・・・!!だがっ!
優しいだけが「ジャンボ十兵衛」じゃない!
めくるめく!うどん!うどん!うどん!うどんの連打っ・・・!!ワンパンチ!ツーパンチ!スリーパンチ!
優しさと共に放たれる、
獰猛なる攻撃力っ・・・!!十兵衛に
「これでもかっ!」と、
うどんで締め上げられているような感覚。
堪らん、最高である。それから暫くして、私は席を立った。
出入口近くにあるレジで、オバアに舌代を払っていると、オバアが言う。
「食べれたかねぇ・・・
あれはなかなか食べ応えがあるきねぇ・・・」「あはは・・・ようよ食べた・・・・・・!」(ようよ食べた = なんとか食べきれた、の意)心配そうに苦笑するオバアに、
私は笑ってそう言い残して店を出た。
<オバアが一所懸命に運んできてくれた
重量級の"ジャンボ十兵衛"に、負けるわけにはいかなかったぜ・・・!>来たときと同じように潮風が漂ってくる。
優しく穏やかに漂ってくる。
◆ 手打うどん 十兵衛
(高知県室戸市羽根町乙1268-1)
営業時間/11時〜14時・16時30分〜20時
定休日/火曜日(祭日の場合は水曜日) ※定休日は3年前のデータにつき注意!
営業形態/一般店
駐車場/9台
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