2012.05.17.07:30

手打うどん 十兵衛 EP4/ジャンボ十兵衛

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私の注文を受けたオバアは去ってゆき、
厨房に居る女性に注文を伝えている。


この女性は毎回来るたびに見かける女性で、
十兵衛のオバアより若く、私のオカンぐらいの歳であるように見受けられるから、
おそらく娘さんか嫁さんか、どちらかなのではないだろうか。


基本的に「十兵衛」は、その女性とオバアの二人で切り盛りされているようだ。


うどんを待つあいだ、
私はとにかく窓の外に見える山と田園の風景を、ただただ見つめていた。


雨は一旦上がったようだが、相変わらずの灰色の空と、
伸び始めた草の淡い緑による色彩の対比は、
窓ガラスに付いた水滴の妙味からか、水彩画みたいな風情がある。


流れるテレビの音声。
テーブル席のおじさんたちの話し声。


ソロリソロリと歩み寄って来たオバアが私の前に置いたそれは、
田舎のうどん屋にまったりと漂う穏やかでのどかな時間を切り裂く、攻撃力。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛(三玉)


『ジャンボ十兵衛(三玉)』



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛(三玉) 単体


通常よくあるうどんのドンブリよりも
数段大きなドンブリに入れられた、大量のかけ出汁。


その上には、「揚げ」や「ワカメ」など、
うどんの具材の定番から、「コーン」や「ゆで卵」や「海苔」みたいな、
うどんよりもラーメンの上でよく見かける奴らも乗っている。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛(三玉) アップ


特筆すべきは、「カニカマ」
これがなんとも十兵衛らしくて素敵だ。


「全日本カニカマ評議会」の高知支部長を勤める私は、大変に感動した。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛(三玉) 麺アップ


極端な攻め気は無いけれど、柔らかで優しい食感、
その芯部にたしかに籠められているように感じ、噛むたびに、


ビンッビン・・・!
伝わって来る・・・!



オバア魂っ・・・!!


<うあぁぁぁぁぁ・・・・・・!
アルデンテの変化を揺さぶりかけながら・・・!
胃袋の中っ・・・心の中っ・・・・・・!>



跳ぉぉぉぉぉび込んできたぁっ・・・!!


ジャンボ十兵衛の全速強襲っ・・・!!



手打うどん十兵衛 カツカレーうどん


『カツカレーうどん』



手打うどん十兵衛 カツカレーうどん アップ


サクサクの「トンカツ」と、出汁が効いた「カレー」
それから我らが「うどん」のスリートップによる攻めは、
優しく包み込んでくれるような「ジャンボ十兵衛」とはまた違った軌道を描き、なかなかに力強い。


一応、これを数式に直してみると、
「(豊ノ島+琴欧州)×白鳳」である。


無論、「豊ノ島=トンカツ」「琴欧州=カレー」「白鳳=うどん」で、
欧州カレーに、白いうどん、しかも白いうどんは横綱で云わば"主役"であるという、
非常に無理がなく上手な設定になっている。


ちなみに豊ノ島は、「"と"が付くから」という理由だけでの選出だ。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛と手


一方、「食べても食べても減らない魔法のうどん」との闘いは、激しさを増していた。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛(三玉) 巨大レンゲ


大きな大きな重たいレンゲ、数十トン。


これは翌朝確実に筋肉痛になる重さだ。


しかし私は日々の農作業で体を鍛えている「マッスル農民」で、
「筋肉のカタマリ」みたいな体をしているから、翌朝確実に筋肉痛になるようなことは無いだろうが、
筋肉痛になる可能性が絶対に無いとも言えない、心配である。


<うぉぉぉっ・・・染みてきた染みてきた・・・!!>


優しく穏やかに流れ込むかけ出汁が、
ジワリジワリと染みてくる・・・・・・!


身体の隅から隅・・・!
五臓六腑・・・・・・!



心にっ・・・・・!!


だがっ!
優しいだけが「ジャンボ十兵衛」じゃない!


めくるめく!うどん!うどん!うどん!


うどんの連打っ・・・!!


ワンパンチ!ツーパンチ!スリーパンチ!


優しさと共に放たれる、


獰猛なる攻撃力っ・・・!!


十兵衛に「これでもかっ!」と、
うどんで締め上げられているような感覚。


堪らん、最高である。


それから暫くして、私は席を立った。
出入口近くにあるレジで、オバアに舌代を払っていると、オバアが言う。


「食べれたかねぇ・・・
あれはなかなか食べ応えがあるきねぇ・・・」



「あはは・・・ようよ食べた・・・・・・!」
(ようよ食べた = なんとか食べきれた、の意)


心配そうに苦笑するオバアに、
私は笑ってそう言い残して店を出た。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛(三玉) 完食!


<オバアが一所懸命に運んできてくれた
重量級の"ジャンボ十兵衛"に、負けるわけにはいかなかったぜ・・・!>



来たときと同じように潮風が漂ってくる。
優しく穏やかに漂ってくる。


手打うどん 十兵衛

◆ 手打うどん 十兵衛
(高知県室戸市羽根町乙1268-1)
営業時間/11時〜14時・16時30分〜20時
定休日/火曜日(祭日の場合は水曜日) ※定休日は3年前のデータにつき注意!
営業形態/一般店
駐車場/9台

『手打うどん十兵衛』の場所はココ・・・!


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2012.05.16.09:01

手打うどん 十兵衛 EP3/ジャンボな決心

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手打うどん 十兵衛


駐車場に車を停めて、降り立つ室戸の地。
海から吹く風に乗ってやってきた潮の香りが、ほのかに漂っている。


落ちる小雨。


戸を開けると、白髪の女性がいた。


それが、私の中では「うどん」よりも強烈な印象を残し、
店のマスコットガールに勝手に認定している、「十兵衛のオバア」その人だった。


前回が3年ぶり、今回が2年ぶり通算3度目になるが、
とどのつまり、毎度毎度来るたびに"数年ぶり"なわけである。


時の流れというものは、あまりにも重い。


入って十兵衛のオバアをひと目見た瞬間、
<わぁ!オバアだ!>とはならずに、<十兵衛のオバアはアナタでしたっけか!>
などと、記憶の糸を必死で手繰り、記憶と現実の差を埋めることが必要だった。


しかし、十兵衛のオバアは見れば見るほど、
間違いなしに十兵衛のオバアであり、確実に率直に十兵衛のオバアだった。


特にハニカミながら笑う感じは、全国津々浦々のオバアの中でも、
十兵衛のオバアにしか出せない"純朴さ"がある。


先客は、おじさんが2人。
テーブルで向かい合って仲良さげに談笑しながら、うどんを食べている。



手打うどん十兵衛 窓から見える風景


私は窓際のカウンター席に座った。
穏やかに広がる山や田畑が正面に見える。


あらかじめ置かれてあったメニュー表は、
最近作り直されたのか、新しくキレイ。


過去2度の"十兵衛戦"では、いずれも「カルビうどん」で勝負しているのだけれど、
その「カルビうどん」もシッカリとメニューに記載されている。


<安心したぜ・・・・・・!
"カルビうどん"は、十兵衛名物に俺が勝手に認定しているひと品だからな・・・!!>



けれども、今回は「カルビうどん」以外でゆく。
カルビじゃない十兵衛の一面も見たいのだ。


<ぶっかけ・・・釜玉・・・・・・!
んんん・・・いいな・・・どちらも甲乙つけがたい・・・!>



よくあるメニュー決定までに数百秒を要する長期戦になる匂いが幾許か漂ったが、
すぐさま見つけたのは、強烈に刺激的な文字列。



手打うどん十兵衛 ジャンボ十兵衛の記載


「ジャンボ十兵衛・・・!!」


<なんだこれっ・・・・・・!
どんな一杯なんだろう・・・・・・!>



値段もなかなかであるが、興味は尽きない。
オバアに聞けば大体の内容は教えてくれるだろうけれど、


それでは意味がないっ・・・!!


勝負をする前に相手の力量を判断して、
強そうだからやめる、弱そうだから闘う。


そんなの勝負師じゃねぇっ・・・!!


「うどんを食べること、それは勝負」
私は常に死線をくぐりながらうどんを食べてゆきたい。


だから常にその店のメニューに記載されている最大量を食べるように心がけているし、
この局面でも注文するのである、歩み寄ってきたオバアに。


「じゃ・・・じゃじゃじゃじゃ・・・・・・!
ジャンボ十兵衛の3玉っっっ・・・・・・!!」



(EP4へ続く・・・・・・!)
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2012.05.15.06:51

手打うどん 十兵衛 EP2/山と海と道路

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室戸市の「十兵衛」を目指すかたわら、
東部のうどん屋さん各店の状況を確認する作業は、まだまだ続いたが、


その他の各店はお元気に営業されていて、
しかも皆様、駐車場はほぼ満車であるという状況につき、
私は、いささかあかさかさかす的に安堵した。


そして室戸市へ向けて飛ばす。
疾風の如き速さで。愛車のポルシェを。


左手には、山。
前方には、道路。
右手には、相変わらず太平洋。


走っても走っても、
周りの風景は、ほぼずっとソレ。


山も海も一度に堪能できる、グレイトな状況。


よく「山派」とか「海派」とかいうけれど、
これならば、どちら派でも満足できるのではないだろうか。


無論、私は「道路派」だ。


アスファルトの色合いと固さが堪らない。


やがて室戸市に入った。
行き過ぎるといけないので、速度を"疾風"から"そよ風"ぐらいの速さに落として、慎重に走行する。


すると、左側。
ついに目指すオバアの居城が見えてきた。



手打うどん 十兵衛


『手打うどん 十兵衛』


(EP3へ続く・・・・・・!)
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2012.05.14.07:22

手打うどん 十兵衛 EP1/東進

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おそらく高知県最東端である室戸の「十兵衛」
そこを切り盛りするオバアに初めて出逢ったのは、
高知の地元タウン情報誌「ほっとこうち」で行われていた企画、「あけましてお麺路さん」


通称、「うどんスタンプラリー」に関連して、西は中村市(現・四万十市)、東は十兵衛がある室戸市まで、
県下25店舗のうどん屋さんを食べ歩いているときだった。


当時、中村市に存在した「ほうばい」のスタンプがすでに押されているのを見て、
十兵衛のオバアは目を丸くした。


「西から東まで、ようけ回られちゅうねぇ・・・!」


のちに25店すべてを回って、"生ける伝説"と化す私は、
このとき既に17〜18店ほどを回っていて、"生ける伝説"の「生けるでんせt」ぐらいまで達成していて、
自分が"生ける伝説"と化すのは時間の問題だと、無論わかっていたのだけれど、あえて照れながら答えた。


「えへへ・・・・・・」


「そらそぉよ!俺!うどんのことに関してはマジ半端ねぇから!」
などと自信に満ち溢れてヤングな感じで返すことももちろん可能だったが、
それではあまりにも在り来たりで面白くない返答だと熟考して発した結果が、先の「えへへ」である。


さて、今回はその十兵衛のオバアに逢いに行く。


初めて行ったのが前述の「うどんスタンプラリー」のときで、2回目が2010年の春
以来2年ぶり、通算3度目の十兵衛。


距離的には決して近くは無くて、
例えば「月」と「冥王星」ぐらい遠いのだけれど、
それでも私はオバアに逢いたかった。


うどんを食べるのに、
距離の差なんて関係ない。



<何処まででも行くさ・・・・・・!>


それが、うどん野郎っ・・・!!


途中、広大な太平洋の水平線を右手に見やりながら、
「海はいいなぁ最高だなぁ」などと呟く私は、
うどん野郎というよりも、むしろ完全に加山雄三のみたいで、ナイスガイでしかなかった。



閉店していた安芸のうどん店


途中、安芸市のショッピングモール内にあって、
それこそ「うどんスタンプラリー」の参加店だった店にも、ラリー以来、5年ぶりに立ち寄ってみたのだけれど、
その店はすでに無く、それどころかショッピングモール自体がかなり閑散としていて、
5年という年月の重みを感じると共に、精神的に少しショックを受けた。


5年前の夜、仕事が終わったあと、車を飛ばしてココにかけうどんを食べに来たことも、
あの中細の麺の食感も、かけ出汁の風味も、広々とした飲食スペースの雰囲気も、
すべて鮮明に覚えているのに、今現実に私の目の前にあるのは、
それらの思い出と共に、飲食スペースを封印するように遮断する灰色の「シャッター」なのだ。


「別の店に替わっているかもしれない」
というのなら、まだ想像していたが・・・。


それにしても現実は想像よりも生々しかった。


(EP2へ続く・・・・・・!)
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